笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
雨は嫌い。
だから、雨の日はずっと家の中にいる。
かといって、家の中でボーッとしている訳じゃないけど。
ものを作る仕事をしていることだし、納期が迫っていれば否応なく缶詰め状態になることもある。
でも、元々雨は嫌いだった訳じゃなくて、
色んな思い出がありすぎて…。
僕はザアザアと降り頻る雨を、壁に凭れたままボンヤリと眺めていた。
あれは高校に入って最初の夏休みのこと。
仲のいい友達と遠出をしようということになって、自転車で、海の近くに住むじいちゃんの家へと向かった。
その途中、突然の土砂降りに見舞われて、屋根のあるバス停で雨宿りをした。
僕も友達も、髪から雫が滴り落ちるぐらいずぶ濡れで、雨が小降りになるのを待った。
が、いくら待っても雨は止むどころか小降りになる様子もなく、雨に濡れた体は次第に体温を奪われてゆく。
寒さに震える体を両腕でひしと抱きしめていると、
突然、フワリ、と広くて大きな温もりに包まれた。
驚いて顔をあげると、僕はその友達の腕の中にすっぽりと包まれていて、少し照れ臭そうに笑う彼と目が合った。
潤「こうしたら寒くないだろ?」
その、強引なまでの優しさに僕はただ、頷くしかなかった。