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罪科の音色

第1章 1

 彼女と過ごして2週間経ったある日、行政に指し向かれたのか、将また示談金目当てなのか彼女に捜索願いが出された。

 もちろん真っ先に疑われたのは私であり、私は――――。逮捕されるという恐怖から逃げる様に彼女を手放したのだ。

 彼女が肉親からどんな扱いを受けているか知りながら、だ。

 あれより幾度も罪の意識に悩まされた。そしてその1年後――。
 
 彼女を再び見たのは、無機質なブラウン管の中だった。

 ――――。
 虐待を受けた少女が風呂に沈められ、殺され――そして見つからぬよう放置されていた。

 最近よく聞く幼児虐待のニュースのひとつ。彼女の顔と――いつまで経っても覚えられそうにない難しい名前があった。

 不釣り合いなエゴだけを受けたような名前に――私はそういえば、彼女は自身の名を名乗らなかったな。と思い出し泣いた。

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