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罪科の音色

第1章 1

 ✝︎✝︎✝︎
 
 彼女との生活は暫く――本当に暫くの間は平和に過ぎていった。

 おそらく、彼女は禄に食事も取れていなかったのだろう。連れ帰ったその日からというもの彼女は私の作った当たり障りのないご飯を、本当に美味しそうに、たらふく貪っていたものだ。

 たまにお菓子など買ってくれば、それこそ大興奮していたのを今でも思い出す。
 
 虐待もされていたようだ。一緒に風呂に入った時確認したが、背中や腕。胸など服の上からでは確認出来ない様な場所に大量の痣があったのだ。

そんな光景を見れば、どうしてあんな長時間彼女があの場所に放置されていたか、自然と答えが分かるのだ。

 ――そう、捨て子だ。

 どういう理由かなど知りたくもないが、彼女の母親(または父親)は加護も無ければ生きられぬ幼子をあのような危険な場に捨てたのだ。

 誰かが拾ってくれるだろう、とまるで犬猫でも捨てるような感覚で――。

 そんな彼女は拾われ、暫くは私の所に居た。そう、暫くはだ。今は居ない。

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