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赤い糸

第3章 ネックレス


俺だってまさかと思ったよ。

「そのネックレス…」

京介さんが呟いた一言に俺は直ぐ様反応した。

…ホントだ

襟元から覗くピンク色のキラキラしたハートのネックレス。

あの日病室で見たときには取り去られてた。

でも今、そのネックレスを璃子ちゃんは身に付けてる。

京介さんの前髪の奥は嬉しさと悲しさで揺れていた。

色々と聞きたいんだと思う。

そのネックレスをしている意味とか経緯とか…

だってそのネックレスはクリスマスに京介さんが初めて璃子ちゃんに贈ったものだったから。

だから俺は先輩のためにお節介を発動する。

「そのネックレス…可愛いね。」

何件も店廻ったって言ってた

「え、これ?」

選びすぎて途中でわからなくなったって

「そう、そのハートのネックレス。」

でも、このピンクゴールドの小さなダイヤがついたハートのネックレスを見た瞬間にこれだって思ったって

「母が退院のときにお守りにってくれたんです。」

璃子ちゃんは目を細めてフワリと微笑んだ。

「お守りか…」

京介さんはその笑顔に触れるとクスリと笑いまた腰を屈めて

「よく似合ってる。」

そう言って璃子ちゃんに被せた帽子を取った。

「あ…ありがとう…ございます。」

頬の色を隠す物を取られた璃子ちゃんはさらに頬を赤く染めて俯いた。

不思議な空気が流れていた。

何もかも知ってる京介さんと何にも知らない璃子ちゃん。

もどかしいと言うか切ないセピア色。

ギュッと握られた京介さんの右手は何に向けられてる?

誰が悪いわけでもない。

これはきっと二人へ与えられた試練なんだ。

だって昔聞いたことがある。

神様は越えられる試練しか与えないって。

「…璃子。」

絶対に運命の赤い糸で結ばれてる二人。

「…え。」

大丈夫。

「璃子ちゃん」

絶対に大丈夫だって。

「は、はぃ。」

見上げた彼女の瞳には今京介さんだけが映ってる。

「口開いてる。」

「へ?…あっ!ヤダ恥ずかしい!」

口を両手で隠して首まで赤く染めた璃子ちゃんはうずくまる。

「ハハハッ!ゴメンゴメン。」

もちろん京介さんも一緒になってしゃがみこみ

「ありがとう…本当にありがとう。」

小さな声で璃子ちゃんの耳に言葉を紡ぐ。

「い…いえ…」

さらに顔を赤くした璃子ちゃんの頭は大きな手で撫でられていた。

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