赤い糸
第1章 約束
「…待って…」
こんなこと言ったってあなたは待ってくれない。
「…ダメっ…」
大きくてマメだらけな手が私の体を滑るように這っていく。
暗闇の中、あなたの体温を感じながら身を委ねる何度目かの夜。
「もう、こんなに固いのに?」
いつの間にかパジャマを脱がされた私は彼の唇と長い指に溺れていた。
「…んっ…ハアッ…」
その海は深く まだ殻を破りきれない私を深みへと落としていく。
けれどもそれは怖くない。
なぜなら
「…京介さ…っ…」
あなたと手を繋ぎ連れて行かれているから。
「…璃子。」
今まで誰かを好きになったり交際を申し込まれたことはあったけど、首を縦に振ることはなかった。
でも、強引だけど私のペースを守ってくれた彼に心を預けたのはこの大きな手に触れたからかもしれない。
大きな手はいつも私を守り愛情を分けてくれ迷う私を的確な場所に導いてくれる。
「聞こえる?」
「…イャッ…」
「いい音。」
部屋中に響く音はその大きな手で私を愛してくれる音。
でもね、時折その大きな手に嫉妬する。
「…んぅッ…」
「声我慢すんな。」
だってあなたはこうやって何人の女の人を深い海に溺れさせたの?
「…んううっ…」
自分の意思とは別に勝手に震えるこの体
苦しくて、でも嬉しくて
「…んんっ…ハアッ…イャッ…」
あなたの頬を両手で包みながら必死に想いを込めて瞳に訴えて
「いやらし。」
「…んっ…」
果てた私は唇をねだった。
カシャ…シャッ…
耳元に聞こえるのはこれからあなたを迎えるための準備の音
準備が整うと開いた膝を引き寄せて
「…アッ…」
私のナカにあなたを迎え入れる。
「ヤバい…すげぇいい。」
久しぶりに感じる熱量は私をさらに深く堕としていく。
「…京介さ…っ…」
大きな手を探し必死に絡めて握りしめるとあなたはいつも余裕なんだよね。
指先に優しく唇を落とし優しく微笑み
「可愛いな。」
律動を速めた。
押し寄せる波にもう体が言うことを聞かない。
「もう…ダメ…」
彼の背に手を回して必死にしがみつきその波を全身で受け止める。
すると京介さんは私の唇を塞ぎ深海へと導いた。