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赤い糸

第7章 サクラ


「満開だな。」

「そうですね。」

今週も無事に勝ち上がり来週はいよいよ決勝戦。

「来週までもちますかね。」

スタンド席に並んで座り、夕陽色にに染められた満開の桜を眺めていた。

「もつといいな。」

肩が触れそうで触れなくて 指を絡めたいけどそれはまだ早いと自分に言い聞かせてるそんなもどかしい距離感の俺たち。

「そういえば、優勝したらカレーって約束忘れんなよ。」

「わ…わかってますよ。」

自分で首を縦に振ったくせに頬を赤く染めて俯いて

「なに?勝てないと思ってる?」

「そんなこと思ってません!」

今日コイツはスタンド席で魔女たちとメガホンを握りしめて声を張り上げてくれた。

一週間毎にミリ単位で距離を縮めていく俺たち。

でも、この二週で積もりに積もって何センチ動いた?

それがこの今にも触れそうな指先の距離だと思ってる。

…もう このまま思い出せなくてもいいかな

璃子の気持ちが俺に傾き始めているのは明らかだった。

ただな…

時折コメカミに手を添えるおまえを見るとすぐに手を出すわけにはいかない。

だからといってこのまま放置プレイをカマされるほどできた男でもない。

心では分かってるのに体がついてかない。

健康男子な俺が毎晩頭を悩ませてるっていうのが今の現状。

…ダメだ

風が通るたびに璃子から甘い香りが俺の心を擽る。

俺は自制するようにさりげなく立ち上がると

…コロンコロン

「悪い。」

「すいませ…」

勢い余って璃子のペットボトルを落としてしまった。

俺は急かさず璃子の足元に手を伸ばし

「よいしょ…」

ラッキースケベってあるけど

「…あ。」

「…えと。」

手が触れ合うのって…これはラッキー何ていうんだ?

「ゴメンナサ…」

璃子は頬を真っ赤に染めながら手を引き戻そうとする。

だけど

「おまえの手冷たすぎんだよ。」

「え…ぁ…すみません…」

こんな風に雰囲気も何もありゃしねぇ言葉を紡ぎ

「風邪ひくから帰るぞ。」

俺は触れた手を離されないようにギュッと握って立ち上がらせ

「…はぃ。」

イエスかハイしか答えないおまえを利用する。

確か初めて手を繋いだときも俺は強引に手を繋いだよな。

あのときと同じ。璃子の手は小さくて柔らかい。

もう一度始めるよ。

握り返してくれたこの小さな手を信じて…

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