貴女は私のお人形
第1章 あの人はあたしの神様で、
若草色のワンピースを着た、現代版アルプスの少女もといあずなの自己紹介が始まった。
陶磁の肌に甘くくっきりした双眸、さらさらのピンクブラウンのボブの髪。あずなのコーディネイトのこだわりは、ちょっとしたところに随所見られる。羊毛のウサギや果実をトッピングした華やかなシフォンケーキのようなコサージュに、重ねづけには見えないほど調和のとれたネックレス、ブレスレット──…。
小物にしてもとびきり存在感を主張するものではない、牧歌的でさえあるのに、この幻想的なラウンジに、あずなはしっくり馴染んでいた。
「湖畔あずなです。二十九歳。昼間はアクセサリー販売員です。○○市から来ました、クラシカルロリィタ寄りのナチュラルガーリーが好きです。本業は、個人製作ブランド、ドクイチゴの作家です」
「えっ……」
乙愛は思わず声を上げた。
「どうかしました?お嬢──…あーーー!!!」
あずなの声は、今しがたの乙愛に優って驚愕していた。
「それ、私が徹夜で作ったジャンスカ!」
「わ、わわぁ」
聞き違いではなかったらしい。
あずなが、ドクイチゴのオーナーなのだ。
ドクイチゴとは、乙愛が今日も袖を通している個人製作ブランドだ。
その路線は、大きく分けて二つある。
一つは白や黒のベーシックなロリィタ服が数多く揃った、いわゆる正統派のロリィタだ。
もう一方が、あずなの装っている感じのライン。古き良きクラシカルロリィタの型を保ちながらも、ロリィタとは無縁の、それでいて可憐なものを欲するガーリーらの間で度々火のつくナチュラルガーリーテイストである。