貴女は私のお人形
第2章 煌る場所にいるはずで、
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二日目の朝、一人で朝食を終えた乙愛は、英国風の中庭にいた。
まもなくここで、オリエンテーリングが始まる。
年季の入った木製の柵に、薔薇の造花がまとわっていた。辺り一面の青々とした芝生が瑞々しい。
巨大なバードゲージのオブジェの白が、陽の光をきらきら放つ。中には椅子とテーブルが入っており、大切に飼い慣らされた鳥の気分を味わえそうだ。
花壇には、色とりどりの季節の花。自然の宝石箱から、天の恵みが汪溢しているようだ。
鳥の歌声や蝉の声を遠くにして、乙愛はコルセット付きスカートを飾った梯子レースに結ばれた、真っ白なリボンを整える。
「おはよ」
少し低めの落ち着いた、それでいて少女らしい声に振り向くと、あずながいた。
「おはようございます。──……」
小花柄の生成のワンピースに同系色のフリルのエプロンを着けたあずなは、ピンクブラウンの髪に色とりどりの花が盛りつけてあるコサージュを挿していた。
バッグは、トーションレースの大きなリボンが付いた、ストローポシェットだ。
首には若草色のチョーカー、サーモンピンクのウサギがぶら下がっている。合皮をカットした花がよく合っている。
チョーカーも、ウサギと花がモチーフになったネックレスもブレスレットも、乙愛はドクイチゴのネットショッピングのページで見たことがある。
「本当にドクイチゴばっかり着てくれてるんだね、乙愛さん」
「好きなんです。その……お人形になれそうな、デザイン」
「そのボレロ、ピコット付けるの難しかったんだー。可愛い。苦労した甲斐があったよ」
乙愛のまとうボレロのリボンに、あずなの指先が触れた。
「七分袖にしたのは、ありそうで他にはなかったから。長袖は暑いけど、肌出したくない女の子って、結構いるでしょ」
あずなの指先が、緩んでいた白いリボンを綺麗な蝶々に結びに直した。
「そのスカートはね、生地に銀色の小花を散らせたかったの。プリントさんの費用は嵩んじゃったけど。あ、プリントさんって便利でね──」