貴女は私のお人形
第2章 煌る場所にいるはずで、
ドクイチゴ製品の制作秘話に始まって、先着組の乙愛とあずなは、暫しベンチで談笑した。
あずなは高校にいた時分、服飾研究部に所属していたという。そこでたくさんの洋服や雑貨を作ったのだという。
「ドクイチゴ自体は、中学の頃からの夢だったの」
「そんなに前からですかっ?!」
「うん。ウチは学校が経済活動禁止だったから。バレると面倒だから、高校出るまでデザイン画だけ描いてたの」
「厳しかったんですね……。私は公立でしたし、学校の真向かいでバイトしてる子もいましたよ」
「良いなー、それ。……高校受験面倒臭がらないで、オトコ苦手じゃなきゃ、私も公立行ってたかも」
「女子校の方がきっと楽いですってば!……あっ」
乙愛が握り拳をつくると、ボレロの袖から覗いたジョーゼットのちょうちん袖のリボンがほどけた。
「あはは、はい。ちょっと動かないでねー」
また、あずなが直してくれた。
「あー!おと姫浮気してるー!!」
突然、鈴を転がすような可憐な声に弾かれて、乙愛の肩が跳ね上がった。
顔を上げると、リュウと腕を組みながら、すずめが朝風のように笑っていた。
「びっくりしたー。おはよう、すず姫。浮気って?」
「おはよう。おと姫ね、純様一筋だと思ってたのに、あずな姫と良い雰囲気だなぁって」
「朝っぱらから密会かい?すずめとオレのようだな。一夜にして結ばれるとは、美しい……タイ○ニックのようだ」
「違っ──」
「違うの!」
抗議しかけた乙愛より先に、あずながもの凄い勢いで否定した。
「違うのぉ……」
立ち上がったあずなは両手を胸元に組んで、泣きそうな顔で二人を見ていた。
「あ!ごめん、乙愛ちゃんっ。乙愛ちゃんが嫌なんじゃなくって、これには深くて浅ーい深い理由が……」
ややあって、あずなが思い出したようにフォローした。
弁解するあずなの顔は、苺ミルクのようにはにかんでいた。