
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第12章 予期せぬ……
「あっれぇ ―― 和泉かぁ?」
「??」
「―― 和泉 絢音だろー」
まさかこんな時間・こんな場所で、
学校の顔見知りと鉢合わせ?
絢音は出来るなら、振り向きたくはなかったけど。
今さらその声の主を無視(シカト)する事も
出来ず、ゆっくり振り返った。
「あーっ、やっぱ和泉だ」
と、上質なメタルブラックのダブルスーツを
小粋に着こなし、185センチ・110キロという
巨躯を”のっしのっし”といった感じで揺らし
やってきたのは、鮫島竜二。
「いやぁ ―― いつも学校で会う時とはかなり印象
違ってたんで、すっかり見違えちまったよー」
そりゃそうだ。
こんな風に、日常の顔見知りに見かけられても
無視して逃げられるよう、そして ――、
今日、見合いした相手から断られるよう、
わざわざ滅多に着る事はない、
大胆な発色とデザインのボディコンスーツを
チョイスしてきたんだから。
(伯母にはこっぴどく怒られたが)
しかし、見つかってしまったのでは意味がない。
