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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第14章 大好きなのに……

  ちょっとでも、人間的には信頼している竜二から
  あんな風にあしらわれ、絢音は半ば捨て鉢になって、
  自販機で買った安酒を煽る。


   (悪かったわね。どーせ私はケツの青いガキよっ)


  たて続けに2本空にして、時間を見る。


   (店、変えようかなぁ ――)

     
  時計の秒針が、2重3重に見える。


   (あ、れぇ……?)


  目を擦る。


   (まずい。少し飲みすぎたか? 
    今夜は帰ろかな)


  絢音はふらりと立ち上がり、カウンターの中の
  マスターに声をかける。
  
  
「浜田さぁん? お勘定、ここに置いておくね~」

「毎度ありー。でも、あやちゃん大丈夫? 随分と足元
 ふらついてるようだけど」
 
「ん、大丈夫。適当に歩いて、そこいらでタクシー
 拾うわ。お休みなさい」
 
「おやすみー」


  絢音はそのままフラフラとした足取りで歩き出す。


  すると周囲がグルグルと回り、
  よたっと壁に手をついた。


   (マズい……完全に足にきてる)


「あの……」


  声をかけられ、ふと振り返った。


「良かったら送ってあげようか?」


  話しかけてきた男は髪の長いスリムな
  背の高い男。

  あんまり好みのタイプではない。
  

「いえ……お構いなく。どこかでタクシー拾います
 から。ご親切にどうも」


  そう言って出ていく絢音の後をその男が追った。



「―― ふぅ~っ、浜ちゃん水ちょうだい」


  そう言って竜二がやってくるとマスターが
  慌てている。


「竜二、大変! 絢の出たあと清吉が追いかけ
 てったわよ?」

「あぁっ?? 嘘だろ」

「ほんとよ」


  竜二は慌てて絢音の後を追いかけた。

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