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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第3章 導入部・その①

  新学期 9月の初め ――。  
 
  まるで未知の不安を払拭するかのように、
  受験勉強に打ち込んできた成果は実った。
  
  2学期・統一模擬試験の結果は、
  第2位の生徒に***点もの大差をつけて
  見事な第1位。

  同時に念願の特別推薦入学枠も獲得した。
    
  この数週間の間は、ただその日一日を過ごす事に
  必死だった。

  友達や家族にも言えない秘密を抱え、
  受験生としての勉強も続けながら、
  体調の変化を回りの誰にも悟らせないように
  いつも通りに振る舞う。

  それがあの日、自分の中に新しい生命が宿ったと
  確認したあの日から考え抜いて決めた事だった。


  学校で貧血を起こしてから、
  考えてみるとあの夏祭りの最終日……、
  また明日からしばらく会えなくなるねと、
  寸暇を惜しむよう青い欲情をぶつけ合った
  あの日から ――。

  確かに毎月不順な事はあっても、
  来るべきものが来なくなっていた。

  まさかと思いつつも確かめる事が怖くて
  暫くは日常を過ごしていた。

  けれどその内に、どんどん食べ物の臭いに
  敏感になり、
  学校の食堂では吐き気まで催し出した。

  とうとう自分の身体の変化を無視できず、
  絢音はこっそりと何駅も離れた商店街で
  妊娠検査薬を購入し、
  自分のお腹に宿った命を確認したのだった。

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