テキストサイズ

オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第3章 導入部・その①

  だけど、今更誰にも相談なんか出来ない。
  ”堕ろす”という行為が、自分のした軽率な行動に
  最後まで責任を持つ、という事になるのか?は
  わからないけど。

  そうゆう覚悟を決めてから絢はもう迷うことなく
  突き進むもうと心に決めたのだった。

 
  妊娠*ヵ月。

  悪阻と心労で上手く食事が取れず体重が
  激減していた事もあるが、
  元々着痩せするタイプで。
  私服も制服も上手く体のラインを誤魔化して
  くれた事助かった。

  この頃になってもまだ、誰1人絢音の妊娠に
  気付く者はいなかった。

  が、期末試験を*日後に控えた週末のある日。
  すぐ下の弟・理玖にバレた。


  相変わらず両親は2人揃って残業や出張に
  かこつけた逢瀬に忙しく。

  子供達の養育は長女の初音に任せきり。

  
  しかしそれまで店屋物がメインだった和泉家の
  食生活は、手先が器用で手料理自慢の理玖の
  おかげでかなり健全化され。

  そんな理玖が夕食の調理を進めていた時。

  その匂いに胃を刺激された絢音は吐き気を催し、
  トイレで激しくえずいた。

  トイレから戻った絢音に理玖は何かを悟ったような
  視線で怪訝に絢音を見つめていた。



「――理玖ちゃん、ごちそうさまでしたぁ。
 美味しかったよ~」

「うん、お粗末さまでしたぁ」

「さてと、私はお風呂 おフロ ~~」


  と、初音が自室へ引っ込んだ時。

  理玖はやっと重い口を開いた。  

 
「―― お前、妊娠した?」


  予想だにしない、弟からのいきなりの問いかけに、
  絢音は最悪のリアクションをしてしまった。


「えっ ――」


  あまりに突然の事で頭の中が瞬間空洞になり、
  否定も誤魔化しもせずただ言葉を詰めて
  しまったのだ。


「で、姉ちゃんたちはもう知ってんの?」

「――や、やだぁ、あんた何言ってんの?
 妊娠なんて……」

「今更とぼけんなよ。一昨日の夜、トイレに検査器の
 空き箱忘れてたぞ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ