テキストサイズ

オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第8章 学校にて


「はい、お待ちぃ、あ、絢ちゃんあんたって学校の
 成績一番なんだってぇ? 珠ちゃん喜んでたわよ~」


  店主のおばちゃんが笑う。


「珠姫さんが?」

「昨夜ここで一緒に飲んだのよ。勿体無いから実家では
 雇わないってお婆は言ってるって? それにゃ
 あたしも同意見だ。若いうちはどんどん新しい物事に
 触れて、見識を深めるべきさ」

「……」


  気分がまた深く落ち込んでしまった。

  私はおばちゃんの言葉に何も答えずに、
  丼を食べ始め、鮫島先生も食べ始めた。

  2人とも無言で食べ終わった。


「おばちゃん、2人分置いとくね」


  立ち上がり、カウンターに金を置いて
  さっさと店に出る私の後ろから鮫島先生が
  声をかけた。


「払うよ」

「いいよ、この前のお返し。そっち曲がれば流しの
 タクシー拾えるよ。じゃ」


  何か言いたげだった彼を無視して反対方向へと
  歩き始めた。

  本当はこっち方がずっと交通量も多いのだが、
  これ以上誰とも話したくなかった。

  話す気分になれなかった。

  まだ、する気はなかった、『就職活動』

  そんな言葉で気分が沈む。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ