
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第9章 季節はうつろう
女子高生達の思わぬ水入りで、
絢音と竜二の興奮は中途半端に削がれた形
となったが、新宿へ向かう途中の車内は
2人きりなので。
外見上は平静を装ってはみても
お互い必要以上に意識し合っているのが
明白で……。
(この沈黙、何とかなんないかな……)
(くっそ ―― 何なんだよ……
さっきから心臓バクバクいって止まんねぇし、
口から飛び出ちまいそうだ……)
(そっか! こうゆう時はまず年下の私から
なんか話しを振らなきゃ……
って、なに、話せばいいんだろ……)
(絢音の奴、さっきはぜってぇ勘違いしたよな。
実際問題、あの邪魔が入らなきゃ、
マジやばかったんだから)
(お願いだから何か話してよ)
(しかし……絶好のチャンスを逃したような
気もしなくはない……)
そうこうしているうち、竜二運転の車は無事
絢音のアパート前に到着した。
2人はそれぞれ違った意味で深くため息をついた。
((はぁ~っ、やっと着いたよ……))
しかし!
絢音がドアのロックに手を伸ばしたのが
合図だったように、
竜二は絢音の体をグイっと引き寄せる。
ごく自然と2人は間近で見つめ合うような
感じになり。
竜二は、いつもはほぼ前髪で隠れてしまっている、
絢音の見開く大きな瞳をじ~っと見つめた。
「な、何……?」
竜二は絢音の顔からメガネを外し、
ダッシュボードの上へ。
「だから、何なんのよ?? メガネ返して」
(……んと、オレ、何やってんのやろ……
自分でもよう分からん……)
