
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第9章 季節はうつろう
「……センセ?」
何かを訴えかけるような絢音の真っ直ぐな瞳を見て
竜二の中でガラガラと理性の崩れ落ちる音がした。
「わっ!」
小さな悲鳴を上げた小さな唇は竜二に塞がれ、
それきり声どころか吐息すら吐き出すことが
出来なくなった。
”ヤベェ、止まんない……”
貪るようなキスをしながら竜二の頭の片隅には
そんなことがチラッと過った。
突然の事でさすがにパニくった絢音は、
必死に体を捩って竜二から逃れようとするが。
それを許さないとでもいうように、
竜二は素早く絢音側のシートベルトを外し
シートを倒して、竜二の大きな体が絢音の体に
覆い被る。
”あぁ、マジにヤベェよ……どーする? オレ”
*** *** ***
竜二は唇を絢音の真っ白な細い首筋に這わせながら
必死に理性の欠片をかき集めた。
強めに首筋を吸い上げたあと、
シートに手をついて絢音との距離を開けた。
「……すまんかった」
気まずそうな顔をした竜二に絢音は ――。
「……」
竜二は絢音が自分に身を任せてくれた事が、
まだ、自分が求められている証のようで嬉しかった。
竜二はため息をつくと絢音から体を離した。
”中坊じゃあるまいしこんな所でなに
サカってんだよっ”
「ホント、すまんかった。ガキみたいな事した」
絢音は乱れた服と髪を整えながら降り立ち、
足早にアパートの鉄階段を昇って行った。
