テキストサイズ

オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第9章 季節はうつろう

  《 Love is blind 》 ―― 

  恋は盲目 ―― とは、良く言ったものだ。

 
  恋に落ちると、理性や常識も失ってしまう。
  と、いう事らしいが、まさかそれを三十路過ぎて、
  この身を持って知る事になろうとは……。


  明かりを落としたホテルのベッドの上で、
  竜二はヘッドレストへゆったりもたれかかるような
  スタイルで横たわっている。

  1人なのか? と、思いきや ―― 
  竜二の下半身部分のブランケットの膨らみが
  モコモコと動いて、目鼻立ちのはっきりとした
  美人系の若い男・楓がその中から顔を出した。


「もーうっ、八木さんもマオちゃんも言ってたけど、
 最近のリュウちゃんってばホントに変っ」

「…………」


  楓は「ちょっと、聞いてるの?!」と言いながら、
  竜二の耳をつねった。


「いてててて――っ、聞いてるってば!」

「嘘ばっか」

「……そーいや、お前もまだ高校生だったっけ」

「はぁ? どーしたのよ、藪から棒に」 

「あ、イヤ、忘れてくれ、何でもない」

「ふ~ん……どうやら今回は、2丁目の連中の噂話しも
 あながち噂だけじゃないみたいね」

「あ? うわさ??」


  「あーぁ、何だかシラケちゃったぁ」と、全裸のまま
  ベッドから出て片隅のソファーの上にある自分の
  洋服を身につける楓。


「お、おい、今夜は泊まってくんじゃなかったか?」

「よく言うわよ、肝心のジュニアがうんともすんとも
 しないんじゃ、泊まる意味ないでしょ」

「…………」

「片思いのお姫様に早く思いが通じるよう、
 祈ってるわ」


  と、出て行った。    

ストーリーメニュー

TOPTOPへ