
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第9章 季節はうつろう
「―― あやちゃんは何位だった?」
100メートル走を走り終わると、
たまたま図書館当番で仲良くなったB組の
朋香ちゃんが、私の肩に腕をまわしながら
聞いてきた。
「……聞かんで」
見てたくせに。
手の中にあった『6位』の紙を見せた。
もちろん、6人中6位って意味だ。
足の速さにだけは
絶対の自信があったんだけどなぁ。
桁違いの金持ちって、何でも出来るものなの?
特にS組の子達って、たいがい何の授業でも
そつなくこなしちゃってさ。
でも、そんななのに性格的にはみんなどっか
おかしなヤツばかりだと思う。
この目の前にいる樹ちゃんなんか、
やっぱり何でもそつなくこなす、一見爽やかそうな
リケジョだけど、その実、かなり思考が腐ってる
腐女子だし。
「あやねぇぇ! 俺も6位だよ〜!」
春ちゃんが、6位の紙を見せながら突進してきた。
因みにこの子は、この学校の理事長のご子息様。
のほほ~んとした外見通り性格もいいし、
総合的に見たら、あの『ダサ男』より、
いい奴かもしれない。
政治屋一家の三男の割にバイク好きの走り屋集団に
所属するくらいの、バイクきちがいって点を
気にしなきゃね。
「先頭集団で、だよね?」
春ちゃんの走りは、オリンピック選手並み。
因みにその春ちゃんが走った教職員チーム第1組の
1位があの『ダサ男』だった。
「私は、2位〜! 桜すっごく頑張ったんだよ~、
ねーあーちゃん、いい子いい子してぇ」
桜が、満面の笑みで走ってきた。
両性具有だけど、
本当にめっちゃ可愛い顔をしている。
性的な対象として先輩だけでなく、
後輩からの人気も高いみたいだ。
でも、ものすごく天然で、不遠慮なヤツ。
思ったことを、すぐに口にする。
「最後尾グループで、だよね?」
桜は私より運動神経が残念なヤツだ。
その点、ものすごく親近感を覚える。
いや、ホントここにいると、今までの自分の価値観
全て変わってしまいそう……。
