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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第9章 季節はうつろう


  何だかそのまま戻る気になれなくて、
  遠回りをするように学校の周りを歩いていた。

  あまり人気のない裏道に入ったあたりで、
  後ろから声を掛けられた。


「あれ〜? こんな所で誰かと思えば和泉絢音ちゃん」

「え……」


  振り返って見ると、知らない顔だ。

  でも、上京してそろそろ1年。

  例の部活のせいか?

  私の顔と名前は、自分で思ってる以上に
  他校の生徒達の間へ広まっていたようで……。


「裸足でどうしたの? ん?」

「あ……」


  競技終了と同時に保健室へ向かってて。

  そう言えば私、裸足だった。

  そう思ったら、急に足の裏が痛くなった。


「足、痛いんじゃない?」

「え ―― いえ。大丈夫ですから」

「オレが姫抱っこして連れて行ってあげるよ。
 何処へでも」


  そう言いながら、ギラついた欲望むき出しの
  素顔でこちらへにじり寄ってくる。


「え? いえ、結構です」

「遠慮はいらないよ?」


  げっ。ちょちょちょ……ちょっと!
  冗談やめて。


「や、いや。ホントに結構ですから」


  歩き出そうとしたら、手首を掴まれた。


「?!」

「そんなこと言わないでさ。オレら、絢音ちゃんが
 入ってきた時から、ずっと可愛いって思ってたん
 だよねー」

「離してっ!」


  き ―― 気持ち悪っ!
  掴まれた手首を振りほどこうとするのに、
  強く掴まれて、離せない。


「離してください! 大声出しますよ」

「じゃ、俺は絢ちゃんの可愛い唇をあつ~いキッスで
 塞いじゃおーかなぁ。デヘヘ ――」


  マジ、気持ち、わ・る・いっ!!

  最初から喧嘩になると身構えた時と違って、
  今の私は完全に油断しおまけにいつもの
  冷静さを大きく欠いていた。


「早いとこそこいらの空き教室に連れ込んで
 味見させて貰お-ぜ?」

「おぉ、そうだな」


  冗談じゃないっ!!

  あんたらに弄ばれるくらいなら、
  一生男断ちした方がなんぼかマシだわ。

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