
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第11章 ちょっとしたヤキモチ
「何よぉー、しけた顔して溜息なんかついちゃってぇ」
「ほんと少しは加減してよ。いつも言ってるでしょー?
マジ痛いの、あんたの平手」
そう言って利沙を怪訝な顔で見ると、
じとーっと黙ってこちらを見ている。
「な……なに?」
「絢、あんたさ……彼氏? 出来たでしょ」
「はい?」
「もしくは好きな相手が出来たとか?」
ドクンっと胸の奥が鳴った。
(好きな……相手?)
真っ先に、竜二の顔が頭に浮かぶ。
「な ―― なにを根拠にそんな話を……」
「あ~っ、ほ~ら、赤くなった。なんか艶っぽい
のよねぇ? 最近のあんた」
「えっ?」
(つ、艶ってなに?)
赤くなる私をじーっと見つめ利沙は確信した。
「変に色気出してないで。うちにも彼の友達でいいから
紹介してよねー」
「ちが ―― そんなんじゃない、もん」
(私……そんなに違う?)
「あ、そうそう、今夜、合コン付き合ってね」
「えーっ」
「聞いて驚かないでよー。な、何と!お相手は
四条学院高等部・生徒会執行部の
王子様達なの。7時・アクエリオンに集合ね」
そう言うと利沙はさっさと次の教室へ戻って
行った。
「あ、ちょっ、利沙ぁ ――」
(ってか、アクエリオンはちとヤバいんとちゃう?
アパートにもフィガロからも近すぎだよ……)
目前の合コン、来春の受験に思いを馳せ、
再び重苦しいため息をついた。
