
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第11章 ちょっとしたヤキモチ
まだ、皆んなにはカミングアウトしてないけど、
好きな人がいる身の上でこんな席に来るって、
問題だよねえ~……。
合コン会場となった、アクエリオンはアパートから
徒歩10分という所にある創作料理のお店。
数カ月前、区が出版しているタウン誌で
紹介された事からじわじわ火がついて、
今では2年先まで予約で一杯という人気店だ。
十人掛けのテーブルにて男女交互に座るという、
典型的なスタイルで合コンはスタートした ――。
私はテーブルの端なので、
隣に座った生徒会副会長の
井上くんと話す事になる。
「それにしても意外だったなぁ」
「えっ?」
「いや、まさか和泉さんがこのテの集まりに来るとは
思ってなくてさ」
それ、どーゆう意味よ??
「ア、ハハハ……」
「それにさ、ホラ、あの口喧(やかま)しいお叔母さん?
に、よく反対されなかったねぇ」
アルコールの勢いか?
はたまた、彼は普段からこういう人なのか?
いい年してあまりに失礼な口ぶりの井上くんに
不愉快になって、
自然とお酒ばっかりグイグイ進んでしまう。
……竜二センセならたとえ初対面でも絶対こんな
言い方はしない。
初めての出逢いがどうであったにせよ、
彼がこんな風に凄く気になる存在になるなんて、
自分でもびっくりだ。
井上くんとの話しにも相槌を打つのが面倒になって
ついつい冷酒に手が伸びる。
すると斜め向かいにいる利沙が、
キッと鋭い視線を送ってきて、
指でNGサインを送ってよこした。
