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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第11章 ちょっとしたヤキモチ

  ―― それ以上飲むな!!


  恐らくそんなメッセージだろう。

  けど私は、こんな最低男との中身の無い会話なのに
  ちゃんと相槌を打っているし。

  凄く頑張っている。

  そんな視線を利沙に送り返していると、
  井上くんや周りの人達が目を見開いた。

  何を驚いているのか? と思い、
  振り向くと、目の前に、
  仕立ての良さそうな濃紺のネクタイ。

  見上げると……竜二センセだった。


「こんばんは」


  彼はそう言って微笑んだ。

  本当に物凄くびっくりした。

  私はこんな所でその顔を見ることができて、
  すごく喜んでいる自分に驚いた。

  ホントいつの間に、私はこんなにもこの人に
  惹かれてしまったのか。

  そう思ったあと、はっとした。

  こんないかにも合コンな席にいるところを
  見られたら、もうダメじゃん。

  ―― って、何がもうダメなんだろ?

 
「あ~ら、和泉ちゃんじゃない。今晩わー」


  背後から女性の声が聞こえてきた。

  ――女連れかいっ?!

  スッとセンセの隣に現れたのはモデル並みの美女。

  何だか彼女は私を知ってるようだけど、
  私は彼女に見覚えはない……と、思う。


  センセは肩を竦めたあと、
  私に視線を向け「じゃ、また」と言って、
  その女の人と去って行った。

  もう会計は済んでいるようで、センセはレジ前の
  店員に会釈だけして通り過ぎた。

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