
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第11章 ちょっとしたヤキモチ
きっといつも、女が席を外した隙に支払を
終わらせているんだろう。
あれやこれやで目が回るくらい忙しいって、
言っていた割りには余裕ありじゃん?
今は毎日美女と食事をする期間なのだろうか?
そりゃ、他人事にまで手が回りませんわねぇ。
合コンは全体的に盛り上がらないまま
お開きとなった。
得意げにあちらの幹事が
「女子の皆さんは3千円でいいから」と言った。
あっちは男でうちらの倍以上は飲んでいたと思う
のだが、同額3千円だった。
割り勘で払うのって得意気に言うようなことか?
解散した後、案の定利沙が耳打ちしてきた。
「まさか、あんたの相手が ”鬼の鮫島” だった、
とわねぇ~」
「あ、センセと私はそんな関係じゃ……」
顔を耳まで真っ赤にしての否定じゃ、
説得力皆無だ。
「私にまで隠さんでもよろしわ」
「……」
「や~、また赤くなってる~。ホントあんたって
分り易いね」
「……」
ポケットの中のスマホが振動する。
スマホの画面を見ると……鮫島の名前があった。
その文面には
『ちょうどお互い、食事終わったところ?
トーホー会館の嵐山茶房で待ってる』とあった。
……という事は、あの美人との二軒目は
なかったということだ。
『今から向かいます ―― 絢音』
私はすぐに返信した。
「結果は逐一報告しなさいよー。じゃ、また来週」
「うん、お疲れさま」
