
オオカミは淫らな仔羊に欲情す
第11章 ちょっとしたヤキモチ
歌舞伎町『嵐山茶房』は、
京都は宇治産の良質なお抹茶をふんだんに使った
甘味が評判の和スウィーツのお店。
テーブルは5つあり、
半分くらいが客で埋まっている。
竜二センセはいつものようにカウンターいて、
テーブル越しにオーナーの相沢さんと話していた。
私に気付くと満面の笑顔をくれる。
私だけに見せてくれる犬みたいに人懐っこい笑顔だ
その瞬間、心の底から喜びが湧き上がってくる。
―― あ、私、やっぱり彼の事が好きだ。
自分の中で彼の存在がどんどん大きくなって
ゆく……。
私が心臓をどくどくと鼓動させながら横に座ると、
心得たよう相沢さんが米粉で作った
フルーツワッフルを作ってくれた。
「う~ん……美味しい! 今までで一番好きかも」
好きなのは目の前のスウィーツなのか、
横にいる男なのか……。
なんてうっとりしていられたのはここまでだった。
「―― で、オレは何番目なわけ?」
「えっ?」
「人からのお誘いメールはシカトかますくせしてさぁ、
合コンする時間はあった訳だ」
「!! そ、それを言うならセンセだって ――」
私の脳裏にはアクエリオンで会った美女の姿が
ちらついている。
「あー?? オレがどうしたよ」
「あんな美人と……」
「あ……桃花の事か」
「へぇ~あの人、桃花さんって言うんだぁ。
ホントに凄い美人だったよねぇ」
「―― 相沢さん、チェックお願いします」
「えっ、私まだ来たばかりなんだけど」
「甘いもんなら何時でも食わしてやる。けど、
嫉妬するほど惚れた男とヤる事は
もっと他にあるだろ」
「他って……」
「それを今、オレに言わせる気?」
「……」
で、でも、ちょっと待った。
まさか今日はこんな事になるなんて思っても
みなかったから、心の準備もまだだし。
下着だってオシャレの素っ気もない、
グ*ゼのパンダ柄白パンツだ。
