幸せの欠片
第14章 幸せの時間
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「かず!」
改札に入ろうとした処で、後ろから肩を叩かれた
俺を “かず“ と呼ぶのはこの人しかいない
「相葉さん…」
昨日の今日、…しかも朝に別れたばかりなのに
「良かった。見つかって」
相葉さんがあからさまにホッとした顔を浮かべている
「どうしたの?用事なら電話くれれば良かったのに」
そう言ってから、相葉さんの手の中にある見覚えのあるそれに目を見開いた
「電話、したくても出来ないし。…忘れてったよ」
苦笑しながら俺の手にそれを握らせた相葉さんが、そのまま俺の背中に手を回す
そして、改札とは反対の方向に俺を促し始めた
「相葉さん?」
「わざと忘れてったと思った」
「え?」
「…俺と、会いたいと思ってたのかなって」
蕩けるような甘い囁きに、思わず顔が熱くなる
こんな人混みで、その声は止めて欲しい
だってまだ身体が覚えてる
相葉さんのぬくもりも、熱も
まだ自分の身体から抜けていないんだから