幸せの欠片
第15章 変わる。
母が死んだ後、最初こそ俺の存在を見ないようにしていたけれど
落ち着きを取り戻した父は、兄と分け隔てなく育て上げた
俺を責める言葉を口にする事もなかった
だけど
だからこそそれが
余計に俺を責めているように受け取れるなんて、きっと父親には理解出来ないだろう
兄みたいに、はっきりと嫌悪を示してくれた方がむしろマシだと思った
優しくされればされる程、周りの当たりは強くなる
それに気付かないのは、結局は仕事に逃げて俺の心まで救うつもりがなかったからだ
表面的な優しさなんて、子どもだった俺にもすぐに分かる
だから俺は、その優しさに騙されるフリをした
“いい子“ を演じて、周りの攻撃をかわす術を覚えていったんだ
自分の病気が分かったのは、母が亡くなった半年後
遊んでいる時に苦しさを覚えて動けなくなった時だった
正直幼くてあまり覚えてはいないけれど、父が医師に怒られてる記憶は残っている
“何故今まで気付かなかったのか“ と険しい顔をした医師に、頭を下げる父の姿は忘れていない