幸せの欠片
第3章 気分転換
「相葉さん、行こう」
「え、もういいの?」
「嫌でしょ、男とこんなの見たって」
くるりと向きを変えて歩き出そうとした俺の腕を相葉さんがいきなり掴んだ
「関係なくない?誰と見たって、綺麗なもんは綺麗なんだから」
少しだけ、表情が険しい
怒らせたんだろうか
「けど、こういう場所は彼女とかの方が」
「残念ながら独り身です」
おどけたように相葉さんが笑う
「…かずは、嫌だった?」
そしてすぐに、心配そうな目を俺に向けるから
「俺は他人なんか気にしないけど、相葉さんは……」
「俺も気にしてない」
“だから安心して堪能しよう!“
掴んでいた手を離し、代わりに背中を軽く叩いた
相葉さんがそう言ってくれるなら
もう少しこの景色を見ていたい
現実から解放されたようなこの場所に、もう暫く自分を置いていたい
「相葉さんがいいなら、もう少し……」
「勿論。その為に連れてきたんだから気が済むまでいいよ」
微笑む相葉さんに安心して、俺は再び光に包まれた街の景色を自分の目に焼き付けていた