幸せの欠片
第8章 小さな嘘
気付いたら相葉さんに抱き抱えられて、雨を凌げる屋根の下にいた
「かず、大丈夫?…真っ青だよ」
「だって、車…、ブレーキ…!」
上手く言葉が繋げない
悲鳴、泣き声、雨に溶ける “赤“
「やだ…っ嫌だ…!」
思い出したくない
身体が震える
“お前が遊んだりしなければ…!“
耳に残る罵倒
「ごめんなさい…!」
蹲って耳を塞ぐしか出来ない
だけど塞いでも、責める言葉は消える事がなくて
「かず、落ち着いて。大丈夫だから…」
相葉さんが俺を抱き締めて、何度も “大丈夫“ と繰り返す
そのぬくもりを求めてしがみつくけど、力が入らなくて指が滑り落ちた
上手く息が出来ない
苦しい
胸が痛い
「かず…、かず?!」
相葉さんの声が遠い
どうして?
抱き締めてくれてるのに、何でこんなに相葉さんが遠い?
“罰が当たったんだよ“
また声が聞こえる
もう止めて
自分でも嫌って程分かってるから
ー…だからもう、何も言わないで