幸せの欠片
第8章 小さな嘘
怒鳴ってから、すぐに我に戻った
そしてすぐに後悔した
「ごめん。…本当に大丈夫だから」
相葉さんに怒鳴るなんて、最低だ
「かずがそう言うなら…。でも、我慢はするな」
変わらずに相葉さんが髪を撫でる
「うん。してないから平気」
本当は、まだ少し苦しい
だけどそれは言えないし言わない
…まだ大丈夫
このくらいなら、休めば治まる
「聞きたい事はあるんだけど、…もう少し休もうか」
撫でる手を止めて、相葉さんが小さく微笑んだ
「隣に、寝てくれる?」
酷く自分勝手なのは分かってるけど
今は、傍にいて欲しい
「かずが元気ならこれ以上なく嬉しいお誘いなんだけど」
わざと揶揄うように笑った相葉さんが、隣に滑り込んだ
「…このくらいなら、いいよね」
そして俺の頭の下に腕を回し、もう片方の手で身体ごと抱き寄せる
その包み込むぬくもりが嬉しくて
今はまだ、何も聞かないでいてくれる優しさが嬉しくて
「ありがとう、相葉さん」
相葉さんの胸の辺りに顔を埋め、もう一度瞳を閉じた俺は
大した時間を置かず、すぐに眠りの世界に引き込まれていった