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幸せの欠片

第8章 小さな嘘


「おはよう、かず」
小さく身動ぎした瞬間、囁かれた

顔を上げると、相葉さんがにっこりと笑っている


次に訪れた目覚めは、最初と全然違っていた

どうやら夢を見ない程深く眠れたらしい

…こんなに深く眠れたのなんて、どれくらい振りだろうか

相葉さんがずっと同じ体勢で俺を片時も離さずにいてくれたのが良かったのかも

だってこんなに安心して眠れたんだから

だけど

「相葉さん、腕疲れてない?」

ずっと腕枕をしていた相葉さんは辛いだろうと思う

「平気。…かずは眠れた?」

「うん、ぐっすりと」

「なら良かった」

相葉さんが少し離れた身体をまた抱き寄せた

「顔色も、良くなってる」

こつん、とおでこを合わせてクスクス笑う

「だから大丈夫だって」

少し顔をずらして鼻を合わせ、更にずらして唇を合わせた

軽く触れるだけのキス

すぐに離れた唇は、ちょっと動けばまた触れる程に近い


「かず、聞いていい?」

「…うん」

「雨に、何か嫌な思い出がある?」


「……ないよ、何も」

あれだけ取り乱していながら、そう答えた俺に

相葉さんは何か悟ったのかそれ以上聞いては来なかった

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