幸せの欠片
第11章 精一杯の勇気
何がおかしいの
全く意味が分からず、スマホを耳に当てたまま黙ってしまうと
相葉さんが小さく溜め息を吐いたのが分かった
『気付かない?デートのお誘いなんだけど』
「え、だって今日は水曜…」
『恋人誘うのに、曜日が関係ある?』
相葉さんがクスクス笑う
「ない、けど…」
普段が週末しか会ってないんだから、すぐに気付けって言う方がどうかと思うけど
『じゃあ、かずの会社の前に6時ね』
「え?」
『今日、車だから迎えに行く』
“ご飯でも食べに行こう“
俺に用事があるかもとか、そんなのは考えてないんだ
まあ、確かに何もないけど
何も聞かないのもどうなの?
「待って。俺、良いも何も言ってないんだけど」
『もしかして、何か不都合あった?』
「…ない」
『なら良いでしょ。じゃあ、後で』
「え、あ、…」
あっさりと切られる通話
…相葉さんってこんなに強引な人だった?
平日の誘いも、こんな一方的な誘いも初めてで戸惑ってしまう
だけど不愉快と思わない自分には
もっと戸惑うしかなかった