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幸せの欠片

第11章 精一杯の勇気


後処理に手間取って、会社を出たのは6時を20分程過ぎてからだった

見慣れた車が、既にビルの目の前に止まっている

運転席で、少しシートを倒してくつろいでいる相葉さんの姿が見えて、小走りに駆け寄った

控えめに助手席側の窓をノックして、相葉さんが目を開けたのを確認してからドアを開けると

「お疲れさま。ほら、乗って」

相葉さんが急かすように俺の腕を軽く掴んだ



「どうしたの、いきなり」

車が走り出してすぐに問いかける

「なにが?」

昼に “恋人を誘うのに、曜日なんか関係ある?“
とは聞かれたけど

やっぱり聞かずにはいられない


「だっていつも、週末……」
「かずに会いたくなった、って言ったら納得する?」

被せるように言った相葉さんの声は、笑っているのにどこか真剣で

何も返せずにただ、頷いた俺を横目で見ると


「俺の家で、いい?誘ったけど実はノープランなんだ」
“ただ、会いたくなっただけだから“


今度は困ったように笑ってみせた



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