蜉蝣の羽化
第1章 悪い人たち
その意味を理解するのに何秒かかっただろう……
私が殺した、と思った。事実そうだったろう。
彼は私が渡した睡眠薬を飲み二段ベットの上の柵に紐を掛けて首を吊った。
葬儀も納骨も済んだ後だった。
私は泣かなかった。
泣く事はなにか違うと思ったから…彼は上手く死に切ったのだ。きっと、安らかだったろうと思い、私が泣く事は自分のした事による(薬を譲渡したこと)罪悪感と彼がもういない、その事実から自分を憐れむ行為であると思い込み、泣く事すらしなかった…
数日後、彼の母親から形見分けという事で吸いかけの煙草、収集していたというジッポのライターが送られてきた。
日数が経ち過ぎた其れは吸ってはみたものの、美味くもなんともなかった…その香りは今でも鮮明に思い出せる……日が経つごとに彼の顔も声も、だんだん薄れていくというのにふと街中の雑踏でその香りと似たものを嗅ぐと思わず………足が止まってしまう。
私が殺した、と思った。事実そうだったろう。
彼は私が渡した睡眠薬を飲み二段ベットの上の柵に紐を掛けて首を吊った。
葬儀も納骨も済んだ後だった。
私は泣かなかった。
泣く事はなにか違うと思ったから…彼は上手く死に切ったのだ。きっと、安らかだったろうと思い、私が泣く事は自分のした事による(薬を譲渡したこと)罪悪感と彼がもういない、その事実から自分を憐れむ行為であると思い込み、泣く事すらしなかった…
数日後、彼の母親から形見分けという事で吸いかけの煙草、収集していたというジッポのライターが送られてきた。
日数が経ち過ぎた其れは吸ってはみたものの、美味くもなんともなかった…その香りは今でも鮮明に思い出せる……日が経つごとに彼の顔も声も、だんだん薄れていくというのにふと街中の雑踏でその香りと似たものを嗅ぐと思わず………足が止まってしまう。