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タバコの火がもう一度

第1章 火がついた日


今泣いているのは
心が痛いから?
後悔してるから?
ううん、
なつこが幸せそうだから。




もう一度だけ
もう一度だけでいいから
あのかわいい笑顔で
僕の名前を呼んでほしい





10年前
当時大学1年生だった僕は部活の大会で福岡へ向かっていた。お金も少ないバイト生活の僕たちにはできるだけ安い交通手段を探すのに一苦労だったが、なんとか格安のフェリーを抑えることができた。船内は思ったよりも清潔感があり、夕食もまずまずといったところだった。夜には甲板へ出てみんなで明石海峡大橋のライトを見ながらお酒をのんではしゃいでいた。

「おいぽんた!のんでるかー!?」
当時仲の良かった松尾先輩だ。僕は大学に入ってぽんたとゆう何とも言い難いあだ名をつけられた。

「のんでますよ!大会絶対勝ちましょうね!あと福岡の街へもくりだしちゃいましょ(笑)」

「お前はほんま女好きやなー(笑)この部活にもかわいい子いっぱいおるやんけー」

「僕まだ部活の人たちの顔とか把握できてなくて(笑)」

「じゃあ俺が1番かわいいと思う子と話にいこ!!お前には手届くわけないけどな!ははっ!」

思えばあの時、松尾さんに話しかけられていなかったら。こんなにも辛くて苦しい思いはしなかったのかもしれない。



甲板から部屋にもどり松尾さんがその女の子を探し始めた。僕もどの人なんだろうと興味本意で探していると後ろから男っぽい口調で声をかけられた。

「ちょ邪魔やからどいてー。ここわたしらの部屋やでー!」

「あ!なっちゃん!ほんまいつもかわいいなー!!」

「もー!松尾さん!やめてくださいー!かわいくなんかないです!!」

あなたに心を奪われるのに時間はかからなかった。

「まーまーなっちゃん一緒にのもやー。ぽんたがなっちゃんと飲みたいってー😜」

「ちょ松尾さん!僕は松尾さんがかわいい子おるってゆうから見に来ただけですよ!」

「えーぽんたってなんか変な名前ー笑 わたし一年生とか全然名前覚えれてないけどぽんたは今一瞬で覚えたわー!笑」


甲板へ戻りタバコに火をつける。
その日は松尾さんとあなたの話や部活の話をして夜遅くまで語りあった。



タバコの火はいつにも増して燃えているように感じた。




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