自分であるために
第2章 思い知らされる性別
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夜の街。昼は静かな街も夜になると騒がしい。騒がしい場所を避けて、裏道を歩いていた。
「お姉さん、こんな夜に一人ぃ?」
「髪どうしたのぉ?」
「寂しくなぁい?」
またくだらない連中。恥じらいもなくお姉さん、お姉さんとナンパしてくる男たち。こういうのは無視するに限る。
「おい! 無視すんなよ!」
俺は走ったがすんなり捕まれてしまった腕。
「クソッ!」
「可愛げねぇなぁ。いつまでそんな憎まれ口利いていられるかな」
「……ちょっ!」
泣きたくなんてないのに涙が頬を伝う。