
好きって言わない!
第29章 unsuitable。
M side
S「アヤメだな。」
M「え?!」
S「好きなのか?」
M「・・・いや、別に。」
アヤメ・・・
そうだ、確かに母さんもそう言ってた気がする。
S「気品のある花だよな。
俺は好きだよ。」
優しく微笑みながらアヤメを見つめる櫻井。
うん、気品があって綺麗で・・・
母さんに良く似合う美しい花だ。
嬉しい。
久しぶりに母さんの事を思い出した。
今まであまり考えないようにしてたから・・・
M「・・・やっぱり、俺も好き。」
ふふ、だって母さんの花だから。
たくさん咲いているアヤメをひとつずつ眺めていると、根元がキラッと光った。
M「ん・・・?
あーーーーーーーーっ!!!」
S「なんだ?!」
M「あった・・・」
キラッと光ったのはイエローの石。
S「イルカか?!」
覗き込んできた櫻井の目の前で、イルカのキーホルダーをぷらぷらと揺らして見せた。
M「ほら、見つかった!!
良かったぁ〜!!」
S「・・・メッチャ笑ってる。」
M「は?」
至近距離で、俺を見つめる櫻井。
笑ってるって・・・俺が??
そりゃ嬉しけりゃ笑うくらい・・・、
M「んっ・・・。」
キーホルダーを持っていた手をギュッと握られて、唇を塞がれた。
突然の事に驚いて体がうまく反応できない。
こんな、誰かに見られてもおかしくない場所で・・・!!
M「ちょっ・・・やめろ!!」
思い切り櫻井の体を押し返して、睨みつけようと思ったのに・・・
S「・・・お前が、いきなり可愛く笑うのが悪い。」
名残惜しそうに唇を離した櫻井の顔は、なんともバツの悪そうな、それでいて照れたような変な表情で。
M「・・・あっそう。」
なんて言って良いか分からなくなってしまった。
だって・・・
突然のキスに戸惑ってるのは俺よりむしろ櫻井の方。
自分でしたくせに、何ビックリしてんだよ。
しかもさ。
