
昭和回想録
第1章 少女・優子
今まで無職だった身から
バイトではあるが仕事に就けたことで
取りあえずの収入が確保できる。
今後の生活にも潤いが出てくるというものだ。
優子とのデートにも。
この古本屋は約10畳ほどの広さで
小説、文庫本、写真集、ビデオなど多種多
様取り揃えてある。
その中には、もちろんアダルト向けのものもある。
店番といっても、ただ座っていればいいと
いうわけにはいかない。
午前中、客の少ない時間には本の袋詰めや
値段付け、棚の陳列を整えたりする。
午後になると、お客の古本の買取や会計で
忙しくなる。
もっとも、毎日がそうとは限らないが。
午前10時にオープンして午後の7時には
閉まる。
午前中は客はほとんどこない。
昼頃からは主婦などが文庫本やコミック目
当てにやってくる。
更に3時過ぎくらいからは学生で賑やかに
なる。
夕方5時をまわれば社会人がプラスされる。
客層も多種多様だ。
毎朝、いつも通学時には優子との目立たな
い挨拶を交わす。
例の手をあげてするやつだ。
運動会以来、バイトのせいで優子とジック
リ会う時間が取れなくなった。
心配されてはと思い、不在とバイトをして
いることを書いたメモをドアに貼り付けた。
これで優子が来ても分かるはずだ。
そして、いつものとおり古本屋に向かった。
