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昭和回想録

第3章 誰よりも・・・。






銭湯は入口を入ってすぐのところに番台がある。

男と女の脱衣場の中間の高い位置にある。

そこで入浴料を払うわけだ。

大抵は高齢の店主が座っていることが多い。

ここの銭湯も高齢のおじいちゃんが座っていた。

俺は大人と子供一人ずつの料金を番台に出してロッ

カーに向かおうとした時に店主に呼び止められた。

金額が間違っていたのかと思った俺は店主の言葉に驚いた。


「お客さん。その女の子は何年生なんだい?男湯に

入れるのは9歳までなんだよ。」



しまった・・・。

子供は小学生までは異性の風呂に入れるものだと考えていた。

後で分かったのだが、たとえ小学生でも10歳以上

の児童は異性側の風呂に入ってはいけないと条例で

定められているのだ。

俺は考えた。

ここで大人しく「はい」と言うのか・・・。

いや。

9歳なら大丈夫ならば俺の答えはこうだ。



「妹は9歳ですよ。」



カラダの発育具合からはとても9歳とは思えない。

だが、身内からの発言だから信憑性もあるはずだ。

しかし店主は疑いのまなざしを隠せない。

今度は優子に向かって質問を投げかけた。

「お譲ちゃんはいくつなのかな?」

本人から直接聞こうというのだ。

優しげな言葉だが厳しい現実を引きずり出そうとしている。



終わりか・・・。



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