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第18章 ふがふが
A「おつかれ。 」
いつものあったかい笑顔。
N「・・・お疲れ。ごめん、またせて。」
対して、俺はうまく笑えているだろうか。
A「ほんとだよー、あ、にのちゃんカバンも
忘れてたから持ってきたよ?」
N「う、ん。ありがと・・・。」
早く帰ろ?と立ち上がった相葉くんは、
チラッと、だけど確実に俺の腕を見た。
でもそれには触れず、お腹減ったねーと
いつも通り笑って俺の前を歩き出す。
遅くなった理由も、腕の赤黒い傷も
絶対気になっているはずなのに、
相葉くんはそのことには一切触れずに喋り続ける。
そういえば入寮してすぐ、
翔くんから逃げた時もそうだった。
相葉くんは、
俺が聞かれたくないことや言いたくないことを
無理に聞きだそうとはしなかった。
言い訳しなくていいことにホッとしている反面、
隠し事をしているという後ろめたさはあり、
さっきから風間の言葉が頭の中をぐるぐるしてる。
"相葉くんはなんでも言って欲しい人だと思うな"
・・・幼馴染のアイツが言うなら、
ほんとに、そうした方がいいのかな・・・
A「、にのちゃん?」
N「っあ、ごめん・・・なに?」
眉を下げ、困ったように微笑む相葉くん。
A「・・・やっぱ何でもないよ。食堂行くのとき、
また迎えにくるね?」
上の空で歩き続けていたら
いつの間にか俺の部屋の前に到着していた。
N「ん、あぁ・・・ごめん。わかった。」
そう言って部屋のノブに手をかけた、
そのとき、
A「にのちゃん、ここどうしたの・・・?」
まだ背後に立ったままだった相葉くんの指先が
俺のうなじに触れた。
N「ぅあっ・・・!!!?」
A「にのちゃん?!!!」
一瞬でフラッシュバックした倉庫の光景。
生温かい吐息、這わせた舌の感覚。
いま後ろにいるのは相葉くんだと
頭ではわかっているのに体がいうことをきかない。
寒くもないのにガタガタと身体は震え、
足は力が抜けて立っていられない。
N「にのちゃん!にのちゃん?!!」
