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第18章 ふがふが
#A
たった数時間、
にのちゃんから目を離している隙に、
俺の頭の中は?マークでいっぱいだった。
目の周りが真っ赤になるまで泣いた理由。
そして赤黒く傷付いた手首。
所々に絆創膏も貼られ、
これが一体何を意味するのか。
よくないことであることは確か。
にのちゃんに何があった?て直接聞くのが
一番早いんだろうけど、
風ポンと2人きりだったあの保健室の光景が
脳裏をよぎり聞くのをためらっている。
何も言ってこないにのちゃんを
"聞かれたくないのかもしれない"なんて
最もらしい解釈で自分に言い訳をして
本当は自分の予期しない事態を受け入れるのが
恐いだけなんだ。
"賭けの話、覚えてる?"
"おれにしてほしいこと・・・決まった?”
軽い感じでそう話したけど、
にのちゃんは上の空って感じで
聞いていなかったみたい。
ちょうど部屋の前まできて、
一旦それぞれの部屋に戻ろうとしたとき、
にのちゃんの首筋に、赤い跡。
虫さされ?
いやいや、ちょっと待ってそれって・・・!
A「・・・落ち着いた?」
N「うん、もう平気、・・・ごめん。」
A「ふふ、さっきから謝ってばっかり。」
あの後、部屋の前での異変に気づき
潤も部屋から出てきて2人がかりでにのちゃんを
ひとまず部屋に入れた。
医務室に行くのを拒んだにのちゃんに、
ブランケットをかけて正面から抱きしめるように
背中を摩ると、漸く落ち着いたみたい。
M「…俺、なんか飲みもん買ってくるわ。」
A「ありがと、潤。」
パタンとドアが閉まると、
腕の中のにのちゃんが、ぎゅ、と
俺のシャツを握りしめる。
N「驚かせてごめん・・・。 」
A「いいって。体勢きつくない?
にしてもほんと、こういう時
ロフトベットって不便だよね(笑)」
ははっと笑ってみせると、
にのちゃんを纏う雰囲気も、
幾分和らいだような気がした。
"やめて" "助けて"
ガタガタと震えながらにのちゃんが発した言葉が
頭の中でこだまする。
