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第27章 しんしん
S「…すごかったなぁ。」
N「…うん。」
トボトボと帰り道を翔ちゃんと並んで歩く。
まーくんのフリースローを皮切りに
猛反撃で2本連続シュートを決め
ついに1点差で勝ち越したまーくんたち。
S「まさかあそこで・・・」
残り5秒、いや、切ってたかもしれない。
ギャラリーの誰もが固唾をのんで
もうすぐ訪れる勝利の時をまだかまだかと
待ち望んでいたその時。
相手チームのエースがルーズボールに
飛びつくと、そこから一気にゴールめがけて
ボールをぶん投げた。
試合終了のブザーが鳴ると同時に
ガゴガゴン!!と派手な音をさせながら、
ねじ込まれるようにゴールが決まった。
一瞬の静寂の中、
タンっとボールがコートに落ちると、
場内は一気に歓声に包まれた。
N「あれ、なんていうんだっけ・・・」
S「ブザービート?」
N「そうそれ。
本当にこんなことあるんだな…」
試合終了直後、
劇的な幕切れに茫然とする俺らとは対照的に
コートの選手たちはやり切ったような
清々しい顔をしていた。
キャプテンの号令で
ギャラリーの下に整列した部員たちが、
揃って ありがとうございました!と
こちらに礼をすると、ギャラリーからも
自然と拍手が起こった。
S「なんだろうな、もっと・・・こう、
悔しがるもんかと思ったけど。 」
N「・・・うん。」
そう。なんだか拍子抜けしてたんだ。
あんだけ気合い入ってたのに。
笑顔でギャラリーに戻ってきたまーくんが
不思議だったし、不満だった。
S「そういやお前、年越しは? 」
しんみりとした空気を変えるように
話題を変えた翔ちゃんの問いに、
今が年末だったってことを思い出した。
