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第1章 ただいまの季節
A side
「後悔なんてしてない。
ここに戻って来て、もっと和が好きになった。
こうやってすぐに触れられるし。」
そう言って素早く頬にキスを落とすと、
一瞬で赤く染まる耳と頬。
「バカ…。」
「ん?」
照れてる照れてる、なんてニヤニヤする頬を
隠せずに和を見ていたら、
唇に温かい感触。
「…キスはここにするもんだろ。」
…。
今、心臓がきゅーーーんってなった!!
開いた口が塞がらずに心臓を押さえてる
俺を、クスクス笑ってる和。
でも和も恥ずかしかったのか、
耳はまだ少し赤いままで。
そんなところがまた堪らなく可愛くて、
「かずーーーー!」
「わっ、バカ、ちょ、苦しいよ!」
俺の脚に収まってた和を持ち上げて
向かい合わせになると、正面から
力いっぱい抱きしめた。
痛いよって言ってるけど、どこか
嬉しそうな和。
抱きしめてて顔は分からないけど、
でもどんな顔をしてるのかなんて、容易に
想像がつく。
しょうがないなって眉を下げて、
でも嬉しそうに頬を緩めてるんだ、きっと。
「ここ、部屋ひとつしかないね。」
「ひとつあれば十分だよ。」
「そのひと部屋も狭いけど?」
「狭い方が和の近くに居られるからいい。」
「駅も会社も遠くなったね。」
「一緒に歩ける距離が増えたんだよ。」
俺が言葉を返すたびに、笑顔になる和。
そんな姿を見て俺もまた笑顔になっていく。
「これからもよろしくね。」
「うん。ずっとよろしくね。」
どちらともなく見つめあって、唇が重なる。
甘いキスがこの部屋に優しい空気を運ぶ。
「ただいま。」
応えるように、また部屋に
甘く優しい風がふわっと吹いた。
-end-