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第1章 ただいまの季節
A side
「ごめん…。」
絞り出した声は震えていた。
泣きたいのは俺じゃないって分かってるのに、
熱い塊が喉にぐっと沸き上がってきて
唇がかすかに震える。
和ともっといい生活がしたくて
ここに来たはずなのに。
自分が情けなくて仕方がなかった。
「相葉さんにとって、付き合いが大事だって
分かってる。
でもさ…もう俺のことなんて
どうでも良くなったのかなってー…」
「そんなことない!絶対に!」
涙をポロポロ流す和を見ていられなくて、
布団ごとぎゅっと抱きしてた。
「相葉さん…雅紀は、俺たちのことを考えて
このマンションに引っ越そうって
言ってくれたんだと思ったら、
寂しいなんて我が儘言えなくて…。」
「和は我が儘なんかじゃないよ。
俺、甘えてた。
ずっと一緒に居られるのが当たり前って。
だから、大丈夫だろうって…。」
「このマンションが嫌な訳じゃない。
便利だし、交通の便もいいし。
でも…。
あのアパートに戻りたい…っ。」
嗚咽混じりに泣く和に、俺も耐えられなく
なって、一緒になって泣いた。
いい大人二人が夜も更けた時間に
何してんだって話だけど、それでも
あの事があったから今も隣に和がいる。
すぐ側にある温もりがどれほど尊くて
愛しいものか、やっと気が付いたから。