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こじらせた初恋

第12章 それは突然

智 side







翔「…智?」



智「くっ……ううっ……」



両腕で顔を隠して泣いていると翔くんはベルトから手を離した。



翔「……ごめ」

智「…いいよ」





翔「え?」



智「好きにしたらいい…」



翔くんの目にはさっきの怒りの炎は消えていて、静かな瞳を揺らしていた。



智「俺のこと抱けばいいよ」



もう終わりにしなきゃ。



翔くんのために。





翔「……智」



智「終わったらもう二度と会わない」



翔「……」



翔くんにこれ以上間違ってほしくない。



智「俺を好きにしたら、二度と俺の前に顔見せないで」



また視界が涙でにじむ。





翔「智…ごめん…」



今度は両手を握られた。



今までの力強さは無く、優しく握っていた。



翔「ごめんな…」



今度こそ、俺の手を解き俺の上からどいた。



俺の服を整わせ、翔くんは部屋から出て行った。







バタンと扉が閉まる音が部屋に響く。




いつだって切なかった。



翔くんが閉める扉の音は。




でもそれももう聞くことはない。



俺の初恋が終わる音。




二度と聞くことのない音。





智「くう…ヒック……うう……」



今ならまだ間に合うだろうか。



翔くんに追いつくだろうか。



その背中に抱き着くのは許されるだろうか。







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