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あの日 ヒグラシが鳴き始めた


夕日が雲の隙間から漏れ出て


美しく輝いていた


それはまるで2人を祝福するかのように


美しい眺めだった。




「また思い出してるの？」

「‥‥‥」

「しょうた、わたしのこと、、、すき？」

「うん。。」

「そう。ならいいけど。」



いまでもふいに涙がこぼれる



もう一度だけ



もう一度だけでいいから



大好きだったあの笑顔で



僕の名前を呼んでほしい




１０年前

僕は20歳のとき大学に入学した。
小さいころからやっていたテニスを大学でも続けたかったので入学早々、テニス部に入ることを決めた。

ミンミンミンミンミンミン‥‥
その年の夏は強烈な猛暑が続いていた。
日差しが肌に刺さり、立っているだけで汗をかくほどだった。夏はどの部活も大会があり、ちょうどその時は福岡で大会が開催されることになっていた。大学生になったばかりで皆運転にも慣れていないのでフェリーで福岡まで向かうことになり、船で寝泊まりすることに少しわくわくしていた。

甲板は海風が吹いていてちょうど明石海峡大橋がライトアップされていた。

「よ！しょうた飲んでるか？😜」

「飲んでますよー！飯尾さんだってまだまだ飲み足りないんじゃないですか？？」

「おぉ、おれと勝負するのか？！」

「そーゆう意味で言ったんじゃないです！笑」

フェリーでの夜は部員で飲み会が行われ、大学に入ったばかりの僕たち新入部員と先輩達が仲良くなるのにもってこいの場だった。

「それにしてもフェリーの夜ってロマンチックやんなー。そーや！しょうたにテニス部一の美女紹介したるわ！😜」

「いやいや飯尾さん、そんなかわいい人が僕になんか見向きもしないことわかってるでしょ。からかわないでください(｡-_-｡)」

「まーまー見に行くだけでもいいやん！な！いこ！」

飯尾先輩は入部した時からとてもよくしてくれた先輩だった。身長が2メートル近くあるのに、中身は子供みたいで、皆からビッグベイビーと呼ばれていた。



この時飯尾さんの誘いにのっていなければ


あんな辛い思いはしなかったのだろうか