うちの社長が酷すぎる!
第9章 波乱
「橘さん!!」
聞き慣れた声がして、そっちを向く。
目の前に下げられた頭があった。
「ごめんなさい!」
「え!?え!?」
あまりに唐突のことで、脳の処理が追いつかない。
頭を下げたのは、杜山さんだった。
息を切らして、なおも頭を下げ続ける。
「え、ちょ……顔上げてください!」
「嫌!」
拒否されて、思わず立ち上がる。
「……さっきは、本当にごめんなさい。
挨拶、返そうと思ったんだけど気まずくて。」
「…気まずい、って…」
頭を下げたままの杜山さんから告げられたことは、衝撃の内容だった。
「…宝条社長と橘さんが、付き合ってるって。
…ふたりが、ラブホテルに入ってくところを見たっていう人がいて…噂になってて。」
「………は、」
ラブホテル。
心当たりは…もちろんある。
最初の研修という名の、処女を奪われた出来事。
「………」
「それで…それで、わたし、宝条社長のこと好きだから…っ、でも、橘さんのことも好きで…、どういう対応すればいいか、わからなくて…!」
顔を上げて涙を拭う杜山さんを目の前に、わたしは動けなかった。