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うちの社長が酷すぎる!

第3章 初めての。

ピピピピピッ

「!?」
低いテーブルに置いていたケータイが光る。
電話だった。

「もしもし!」
『あ、稀乃?悪い、こんな夜に』

懐かしい声。涙が零れてしまった。
「うっ……雄飛ぃ…っ」
『は!?なんで泣いてんだよ?』

雄飛の声だ。低くて心地よい声。
「もうやだぁぁぁぁ……」
『落ち着けよ……話し、聞くから』

「今日…っ入社するとこに行ったら社長さんに口説かれて…朝は海叶にも会って…会社では誠也に会って惚気られるし…!」
『…口説かれたのか?』

雄飛の声が更に低くなる。
「っ違うよ!?口説かれただけで、まだ何もされてないし…」
そう言ったあとで後悔する。…なんか、浮気してるみたいじゃん。
『……そうか…』
「…ねぇ雄飛?私には…雄飛だけだからね。」

ケータイを握りしめて伝えると、雄飛は小さく「うん…」と言った。

『でも……心配なんだよ。稀乃が…俺じゃない誰かのものになったらって思うと…!』
「…雄飛………」

雄飛の気持ちは分かる。でも…
「でも信じて。私は…雄飛だけのものだから…」

ずっと育ててきた恋心に、終わりなんて来させたくない。

『…だよな。うん、ごめんな?なんか…俺が落ち着かせるつもりだったのに』
「ううん、私は…雄飛の声が聞けたから。もう大丈夫。」

人の声を聞いて、こんなに気持ちが安らぐと思ってなかった。
雄飛は照れたように笑っていた。

滲み出た独占欲には微塵も気づかずに私は、一言二言喋り電話を切った。

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