幸せの欠片 *超* 番外編
第6章 奇跡って信じる?
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ジーパンのポケットに手を突っ込んで、小さな箱をゆっくりと取り出す
少し体勢を整えてから
墓石に向かってその箱をそっと開いて見せた
かず、見える?
…これが、その誓いの証
箱の中にあるのは、銀色に輝くリング
本当はきちんとオーダーにしたかったけれど、そもそもかずのサイズ知らなかったし
何より思い立ってからの日数も足りなすぎた
それでも、無理行って刻印だけはちゃんと入れて貰って来た
日付は、俺とかずが初めて出会ったあの雨の日
全てが始まった、大切な日
「嫌でも受け取れよ」
そう声に出してから、墓石に向かって左手をかざした
薬指に嵌めてあるそれは、箱の中身と同じもの
これが、俺に出来る最大の愛しさを込めた嫌がらせ
「…っ」
もう、泣く事はしないと決めてきたのに
情けなくも鼻の奥が痛くなる
じわりと涙が込み上げて来て、受け止めきれなくなったそれが1粒
閉じた瞼の隙間から零れ落ちた