Everyday Love
第17章 Begin Again【白黄】
ジャスミンはあるカフェである人と待ち合わせしていた。
いつものSPDの制服ではなく、清楚で可憐な女らしい私服。黄色がベースなのは彼女のパーソナルカラーだからか。白いハイヒールが差し色に似合っていた。
「ハイヒールなんか履くな」
まるで汚いものを見るような目で言われた過去を思い出し、慌てて首を振った。
いつも待たされていたからきっとまだ来ていないだろう…と思っていたが。
「テツ!」
メニューと睨めっこしていたある人…テツがジャスミンに気が付き花が咲いたように笑った。
テツもまた、いつものロングコート姿ではなく、白を基調とした少しかっちりとした私服姿だった。
「ジャスミンさんっ!」
「遅れてメンゴ」
「いやいや、彼女を待たせるなんてナンセンスですからねっ」
指をクイッと振りながら昔と変わらない口癖を言うテツにジャスミンは表情を緩めた。
さり気なく椅子を引いてくれるテツにまたジャスミンは何もしてくれなかったあの人と重ねてしまうのだ。
スペシャルポリスという職業である以上、遠出や泊まりがけのデートなんかは出来ない。テツは地球署の副署長であるため尚更。
大体は部屋か近所のカフェ、レストランで食事を楽しむのが精一杯だった。
でも、ジャスミンはそれだけで嬉しかった。
あの人はこんなところすら連れてってくれなかったから。
「決まりましたか?」
「うむ。」
「じゃあ、頼みますねっ」
ベルを鳴らしテキパキと注文するテツを何気なく見つめる。
テツは何でも率先してやってくれる。このデートだってテツが計画したのだ。
「やりたいことは全部自分でしろ」
また昔の苦い記憶がフラッシュバックし、ジャスミンは注文したドリンクを飲み干した。
2人は談笑しながら、食事を楽しんだ。
ジャスミンの話に背を仰け反らしながら子供みたいに笑うテツ。
「そんなに面白いかしら?」
「はい、ジャスミンさんって話上手ですよね」
「聞き専だと思ってただっちゃ…」
一方的に愚痴を聞かされ、やっと自分のことを話す番になると「お前の話はつまらない」と突き放されていたのに。
「テツって変わってるわね」
「それだけはジャスミンさんに言われたくなかったです」
それはどういう意味…と問いただそうとしたとき、テツの着ているジャケットに少し黄色いラインが入っているのに気付いた。