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今夜も君をオカズにする

第1章 文芸部

改札の中に入らずに駅の反対側へ抜けると

そこはもっと人気のない

住宅街になるはずだった

柵で囲まれた野原が広がっている

虫の小さな鳴き声を聞きながら左手に曲がると

その暗がりを歩いていく

その先にあるのは公衆トイレ

高いところのある小さな窓からは

こちらも同じく蛍光灯の光が漏れて

誰かが中にいることを仄めかす

車いす用の多目的トイレの前に立つと

僕はコンコンとノックをした

一瞬間をおいてもう二回

二人しか知らない秘密の合図

コソリ

と靴が擦れる音がして

中の気配が扉に来る

かちゃりと扉のロックが外れたら

そこにはコートを纏った制服姿の奥村あずさが立っていた

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